深夜、部屋の明かりを落とす。
スイッチを入れると、小さな琥珀色のランプが灯る。
Tivoli Audio Model One。
このラジオは、ただの電化製品ではない。
時間をチューニングする楽器だ。
Scene: ダイヤルを回す指先
今の音楽は、タップひとつで完璧な音質で再生される。
でも、このラジオは違う。
大きなアナログダイヤルを、ゆっくりと回す。
「ザーッ」というノイズの向こうから、人の声や音楽が浮かび上がってくる。
その瞬間、僕は世界と物理的に繋がっていると感じる。
ノイズは邪魔なものではない。
それは、距離という「気配」だ。
遠く離れた場所で、誰かが喋っている。
その事実が、心地よい孤独感を連れてくる。
Feeling: 木箱が歌う。
筐体は、職人の手で作られた木製キャビネットだ。
プラスチックのスピーカーとは、響きが違う。
音が、柔らかい。
角が取れて、丸くなっている。
低音は豊かで、人の声が驚くほど艶やかに聞こえる。
まるで、小さな木箱そのものが歌っているようだ。
ハイレゾのような解像度はない。
けれど、ここには「体温」がある。
聴き疲れしない音。
それは、生活の中に溶け込むための絶対条件だ。
Root: 不便さを愛でる。
Bluetooth機能もついているが、僕はあえてFMラジオを聴く。
次に何が流れるかわからない。
その偶然性が、凝り固まった思考をほぐしてくれる。
今の時代、効率やクリアさが正義とされる。
でも、人生には「ノイズ」も必要だ。
割り切れない感情、言葉にできない曖昧さ。
そういったものを包み込んでくれる音が、このラジオにはある。
森で会おう。