風の形を見る。南部鉄器の風鈴は、夏の輪郭を描く。

風の形を見る。南部鉄器の風鈴は、夏の輪郭を描く。

見えないものを、音にする。

風というものを、目で見ることはできない。
でも、南部鉄器の風鈴があれば、風の気配を知ることができる。
「リーン…」
ガラスの風鈴が「チリン」なら、鉄器はもっと長く、深い。
余韻(Reverb)。
音が消え入る瞬間の、あの震えるような静寂。
遠くで蝉が鳴いている。
でも、風鈴の音が響くたび、体感温度が少し下がる気がする。
これは、耳で感じる涼だ。

Scene: 硬い鉄、柔らかい音

黒くて重い鉄の塊。
そこから、こんなに透明な音が生まれるなんて。
岩手県の職人が、一つ一つ砂型で作る。
その表面のざらつき(Texture)は、岩肌のようだ。
短冊が揺れる。
風が庭を通り抜けていくのがわかる。
強い風なら激しく、優しい風なら微かに。
風鈴は、自然の呼吸を翻訳する楽器だ。
縁側に座って、ただその音を聞いている。
贅沢な日比谷公園のコンサートより、今の僕にはこの一音が心地よい。

Feeling: 遠い日の記憶

この音を聞くと、子供の頃の夏休みを思い出す。
畳の匂い。
蚊取り線香の煙。
切ったばかりのスイカ。
南部鉄器の音色は、日本人のDNAに刻まれた「夏の原風景」を呼び覚ますスイッチなのかもしれない。
エアコンの効いた部屋では聞こえない音。
窓を開けて、外の熱気と共に受け入れる。
暑いことは、悪いことじゃない。
生きているという実感だ。

Root: 錆びても美しい

鉄だから、いつかは錆びる。
でも、その赤錆さえも景色の一部になる。
プラスチックは劣化するだけだが、鉄は枯れていく。
その変化に寄り添う。
夏が終われば、箱にしまって来年を待つ。
また会おう。
そう言って短冊を外す時、少しだけ寂しくなる。
それもまた、季節の味だ。

森で会おう。