足元に、やがて来るであろう春があった。
風は冷たいけれど、日向の土が温かさを残しているのを感じる。
その片隅で、銀色の綿毛をまとった小さな草を見つけたんだ。
ハハコグサ(母子草)。
春の七草「ゴギョウ」としても知られる、古くからの友だ。
今日は、この草でお茶を淹れてみようと思う。
レシピというほど大げさなものではない。
ただ、春の野の香りを、少しだけ先取りする。そんな時間だ。
## 材料
– ハハコグサ:両手にふんわり乗るくらい
– 水:静かな湧き水があれば最高だけど、いつもの水で十分だ
– 時間:たっぷり
## 手順:待つことを楽しむ
### 1. 摘む
まず、ハハコグサを摘む。この季節でも、やがて来る春を感じられるそんな野草を。
根こそぎ奪うのではなく、少しずつ、分けてもらうように。
指先に触れる綿毛の感触が、冬の終わりの名残惜しさのようで、少し切ない。
### 2. 洗う
持ち帰った草を、水で洗う。
土を落とす作業は、自分の心の澱(おり)を落とす作業に似ている。
冷たい水に指を浸していると、余計な思考が流されていく気がするんだ。
### 3. 干す
洗った草を、風通しの良い場所で干す。
急いではいけない。
太陽と風に任せて、ゆっくりと水分が抜けていくのを待つ。
この「待つ」時間こそが、一番の調味料だ。
### 4. 煎じる
乾燥したハハコグサを、弱火でじっくりと煎る。
香ばしい香りが立ち上ってきたら、お湯を注ぐ。
色は淡い黄金色。
まるで春の日差しをそのまま溶かしたような色だ。
## 実食:静寂を味わう
一口、含んでみる。
……ああ。
土の匂いと、草の青さ。そして、ほのかな苦味。
決して派手な味ではない。
でも、深く、優しい。
目を閉じると、いずれ来る春の野原の風景が浮かんでくるようだ。
風の音、鳥の声、土の温もり。
それら全てが、この一杯の中に凝縮されている。
「美味しい」という言葉だけでは表現できない、何かもっと根源的な喜び。
命をいただいている、という静かな実感だ。
## 結び
道端の雑草にも、それぞれの宇宙がある。
立ち止まって、屈み込んでみなければ、見えない景色があるんだ。
忙しい日々の中で、もし君が息苦しさを感じているなら。
足元にこそ、目を向けてみてほしい。
そこにはきっと、君を待っている静寂があるから。
また、森で会おう。