傷のひとつひとつが、俺の歴史になる。
財布を新調する時、人は「綺麗さ」を求める。
だが、俺がMOTO(モト)の革財布を選んだ理由は逆だ。
こいつは、汚れるためにある。
いや、正確には「変化」するためだ。
新品の時の薄いベージュ色は、まだ何者でもない。
俺のポケットに入り、手で触れ、雨に濡れ、陽に焼ける。
その全てのプロセスを経て、初めて「俺の財布」になる。
Scene: ポケットの中で育つ生き物
植物タンニン鞣しの革は、呼吸している。
最初は硬く、よそよそしい。
だが、数ヶ月もすれば、俺の尻の形に馴染み、驚くほど柔らかくなる。
ふとした時に取り出すと、深い飴色(Amber)に変わっていることに気づく。
ついた傷を指で撫でる。
「ああ、これはあの時のキャンプで薪を運んだ時の傷だ」
そうやって記憶が蘇る。
プラスチックの財布なら劣化でしかない傷が、革の場合は「味(Patina)」になる。
それは、俺が生きてきた時間の肯定だ。
Emotion: メンテナンスという対話
たまにオイルを入れてやる。
乾いた革が油分を飲み込んでいく様子を見るのが好きだ。
「お疲れさん、また頼むな」
そう声をかけながら布で磨く。
手入れをすればするほど、革は深い光沢を放つ。
使い捨てが当たり前の時代に、直しながら使い続ける。
その行為自体が、俺自身の心を整えていることに気づく。
モノを大切にするということは、結局のところ、自分自身を大切にするということなのだ。
Root: 完成しない美しさ
この財布に完成はない。
俺が死ぬまで、変化し続けるだろう。
いつか糸が切れたら、縫い直せばいい。
そうやって、少しずつ手を加えながら、長い旅を共にする。
デジタルウォレットは便利だが、そこに重みはない。
俺は、この革の重みを感じながら、支払いを済ませたい。
それが、労働の対価として金を使うという行為への、俺なりの敬意だ。
森で逢おう。
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