青い炎は静寂の音。Trangiaで沸かす湯は、なぜ丸いのか。

青い炎は静寂の音。Trangiaで沸かす湯は、なぜ丸いのか。

音のない炎が、朝を連れてくる。

ガスバーナーの「ゴーッ」という燃焼音は、時々耳障りだ。
静かな森の朝を壊したくない。
だから僕は、Trangia アルコールバーナーを使う。
真鍮製の小さな器に、アルコールを注いで点火する。
最初は見えないほどの薄い炎。
やがて本燃焼に入ると、美しい青い炎が立ち上がる。
音はない。
ただ静かに、熱だけを伝えてくる。
その静寂が、コーヒーを淹れる儀式を神聖なものにする。

Scene: シンプルという究極の構造

可動部が一つもない。
ただの金属の器だ。
だから壊れることがない(故障知らず)。
故障しないということは、信頼できるということ。
雪山でも、砂漠でも、アルコールさえあれば必ず火がつく。
この絶対的な安心感。
五徳と風防を兼ねたストームクッカーと組み合わせれば、システムとしても完成されている。
軽量で、スタッキングも美しい。
無駄を削ぎ落とした北欧デザインの精神が、そこにある。

Feeling: 待つ時間を楽しむ

火力はガスに劣る。
お湯が沸くまで時間がかかる。
でも、その「待つ」時間が好きだ。
青い炎を見つめながら、今日何をするか考える。
あるいは、何も考えない。
沸騰し始めると、コポコポというお湯の音が聞こえてくる。
静かだからこそ気づく、水の歌。
Trangiaで沸かしたお湯は、心なしか角が取れて丸い気がする。
それは、ゆっくりと熱が伝わるからかもしれないし、僕の心が穏やかだからかもしれない。
効率だけが正義じゃないと、この小さなバーナーは教えてくれる。

Partner: 旅の道連れ

使い終わったら、蓋をして火を消す。
冷めたら真鍮の蓋をねじ込む。
その一連の動作が、旅の句読点になる。
ポケットに入る焚き火。
どこへでも連れて行ける、最小単位のキッチン。
半世紀以上変わらないデザイン。
僕が手にしたあとも、きっと形を変えずに誰かの旅を支え続けるだろう。
青い炎の揺らぎに、僕は自分の「精神(Spirit)」を重ねている。

森で会おう。