儀式としてのオイル漬け。Opinelは、僕の手の一部になる準備をしている。

儀式としてのオイル漬け。Opinelは、僕の手の一部になる準備をしている。

新品のままじゃ、使えない。

店で買ったばかりのOpinelは、まだ僕のものじゃない。
それはただの工業製品だ。
僕のものにするためには、儀式が必要だ。
刃を研ぎ、ブレードの黒錆加工をし、そしてグリップをオイルに漬け込む。
木製のハンドルが油を吸って、飴色に変化していく。
乾燥による収縮を防ぎ、水に強くなる。
これはナイフの寿命を延ばすための処理だけど、同時に「契約」のような気もする。
「これからよろしく」という握手。

Scene: フランスの農民のナイフ

Opinelは高級ナイフじゃない。
フランスの農民が、畑仕事やパンを切るために使っていた実用ナイフだ。
構造は驚くほど単純。
木と鉄。
それを「ヴィロブロック」というリングで固定するだけ。
片手で開くにはコツがいるし、水に濡れると木が膨らんで刃が出しにくくなる。
でも、その不器用さが良い。
自分の手で調整し、癖を知り、使いこなす。
カーボンスチールの刃は錆びやすいけど、研げばカミソリのような切れ味が復活する。
手間をかければかけるほど、切れ味で応えてくれる。

Feeling: 切るという快感

焚き火の前で、フェザースティックを作る。
木材に刃が食い込む感触。
「ショリ、ショリ」という音。
抵抗なく木が削げていく時、脳内で何かが整っていく。
破壊ではなく、創造のための切断。
料理をする時もそうだ。
トマトの薄皮がスッと切れる。
その快感が、料理を美味しくする。
Opinelの丸いハンドルは、長時間握っていても手が痛くならない。
誰の手にも馴染む、普遍的な形状。
100年以上も形が変わっていないのには、理由がある。

Partner: 傷跡は勲章

僕のOpinelは傷だらけだ。
焚き火の熱で少し焦げているし、刃も少し短くなっている。
でも、それがカッコいい。
ピカピカの新品よりも、歴戦の相棒の方が信頼できる。
これは道具であって、飾り物じゃない。
使うために生まれ、使われて輝く。
次に森に行く時も、腰にはこいつがいる。
それだけで、何が起きても大丈夫だと思える。
小さな巨人。僕の手の延長。

森で会おう。