土を掘る、記憶を掘る (Hori-Hori Knife)

土を掘る、記憶を掘る (Hori-Hori Knife)

庭の隅に、春のための球根を植える。
土はまだ硬く、冬の冷たさを閉じ込めている。
僕はホリホリナイフ(山菜掘りナイフ)を手に取り、地面に突き立てた。

ザクリ。
手首に伝わる独特の抵抗感。
このナイフは、日本の伝統的な農具がルーツだという。
土を掘り、根を切り、植物を採る。
その一連の動作が、これ一本で完結する。

無心に土を掘り返していると、不思議な感覚に陥る。
自分が掘っているのは、ただの地面なのだろうか。
それとも、自分の中にある澱のような感情なのだろうか。

黒い土の匂い。
ミミズが驚いて顔を出す。
「ごめんよ」と謝りながら、僕はまたナイフを動かす。
この道具は、僕と大地のインターフェースだ。
鉄の冷たさを介して、生命の温かさに触れる。

作業を終える頃には、指先も心も、心地よい重みを感じていた。
春になれば、ここから新しい命が芽吹く。
その約束だけで、冬を越えるには十分だ。